投稿日:2017年6月22日

“利他的な愛”がローカルを掘り起こす! 和歌山 #ライター交流会 「ジモコロ流 地元ネタ発掘会議」レポート

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今年4月から全国開催をスタートした「#ライター交流会」。4月開催の福岡に続き、6月9日(金)に初の#和歌山ライター交流会を開きました。場所は和歌山市の中心部にある本屋プラグ さん。ゲストは株式会社Huuuuの代表でジモコロ編集長の徳谷柿次郎さんを迎え、有限会社ノオト代表の宮脇淳(和歌山県出身)が司会・進行を務めました。

トークセッションのテーマは「ジモコロ流 地元ネタ発掘会議」、イベントの参加人数は41 人 で立ち見が出るほどの盛況ぶり。ライターやブロガーだけでなく、地元メディア関係者、PR会社社員、地場産業の継承者など、さまざまな職業の人々が参加しました。

【登壇者プロフィール】

●徳谷柿次郎(とくたに・かきじろう)
1982年9月生まれ、大阪府出身。株式会社Huuuu代表取締役。おじさん界代表。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など。Twitter:@kakijiro

●宮脇 淳(みやわき・あつし)
1973年3月生まれ、和歌山県出身。雑誌編集者を経て、25歳でライター&編集者として独立。5年半のフリーランス活動後、コンテンツメーカー・有限会社ノオトを設立した。「品川経済新聞」編集長、「和歌山経済新聞」初代編集長、コワーキングスペース「CONTENTZ」管理人、コワーキングスナック「CONTENTZ分室」オーナー。Twitter:@miyawaki

●地元ネタの企画はどうやって見つける? ジモコロ流企画を見つける7つの視点

宮脇:宮脇淳です。よろしくお願いします。有限会社ノオトという編集プロダクション、コンテンツメーカーの代表です。私は和歌山県和歌山市出身で、大学に入学するまでこの会場近くの実家でずっと過ごしていました。

「#ライター交流会」は、弊社で運営している東京・五反田のコワーキングスペースのイベントです。「ライターが集まり交流できる会を定期的に行おう」と、一昨年から開催しています。なかでも今年2月、「地方在住ライター」をテーマにイベントを開いた反響が大きくて、こんなに盛り上がるなら東京だけでやる必要はないな、と。それで、今年4月には福岡で開き、今回は本屋プラグさんにご協力いただき、和歌山で開催することになりました。

柿次郎:僕はもともと宮脇さんの会社にいて、その後バーグハンバーグバーグというおもしろ系の記事を書く会社に転職し、今年の1月には独立して株式会社Huuuuを立ち上げました。「ジモコロ」というローカルを切り口にしたメディアの編集長を2年務めています。また5月末に小さな声を届けるウェブメディア「BAMP」の編集長になりました。こちらでも、地元のライターさんに協力いただくなど、ローカルを切り口に記事を公開しています。今日は主にジモコロを運営していく中で培ったものの見方や、ローカル記事の作り方をお話できたらと思います。

宮脇:コンテンツを作るのにネタって重要ですよね。その中でも、特に地元ネタを考えるときに大切にしていることってありますか?

柿次郎:僕は現地に実際に行き、フリースタイル的にやるのが好きです。あまり知らない土地のことって、ネットで調べても深い情報が出てこないんですよ。

宮脇:昨年3月に和歌山へ来たときも、泊まったゲストハウスのオーナーさんに話を聞いていたよね。

柿次郎:そうですね。宿に泊まったら、その日に地元にいる人から情報を集めて、翌日すぐ取材先に向かったりします。誰も気づいていないことや地元の人しか知らない情報を得るためには、地元との関係をどう作るのかということが大事だと思っていて。

で、改めて資料を作ってみまして、これまでのジモコロの記事を振り返って、どんな視点で記事を作っているのかを7項目にまとめました。ジモコロも、最初は試行錯誤していたんですけど、いまではまったく知らない土地に行っても何かしら記事が作れる状態になりましたね。それでは、スライドを見つつ説明していきます。

1)まだ全国的に見つかっていない「個性」を発掘

柿次郎:静岡で取材したタケノコ王風岡さんの記事はこのタイプですね。

柿次郎:いわゆる「仕上がっている」面白い人です。記事をきっかけに日本テレビの「沸騰ワード10」という番組にも出演されて、かなり有名になられましたね。

宮脇:クルマで走っていたら、たまたま見つけたんだよね。

柿次郎:そうです。違うネタで静岡に行っていたときに、「クワガタ」「固いもも」「風岡直宏がたけのこで日本一の味を目指しています」という看板を見つけて、最初は取材としてではなく話を聞きにいったんですよ。そうしたら風岡さんはすでに自分をプレゼンする準備ができていて(笑)。こういう面白い人って、地元では有名だけど全国ではまだ広まっていないんですよね。

2)知る人ぞ知る「場所」掘り下げインタビュー

柿次郎:例えば珍スポットですね。熱海の秘宝館みたいに、昭和のバブルでできた面白い施設ってまだたくさんあります。僕は珍スポットのオーナーに、ちゃんとビジネス的な視点で運営していけるのかなどを踏まえてインタビューすることに最近はまっていて。

宮脇:なるほど。「面白い場所」という視点だけじゃなく、ビジネスの話を絡めると、他のメディアや記事とは違う視点になるね。

柿次郎:先日、愛知の蒲郡(かまごおり)市にある「竹島ファンタジー館」という場所に行ったんですよ。オブジェや建物の素材を全部貝で作っている少し異様な場所で。それもたまたま見つけて入ったんですが、オーナーさんがいたので、最後に話を聞かせてもらいました。

しかもそのオーナーさん、その建物を作ったわけではなく、跡を継いだ方だったんです。バブル時代に地元のお金持ちらしき人が世界から貝殻を集めて作ったけど、オーナーがいなくなって施設が数年間放置されていた。もうすこしで取り壊しになるところで、現オーナーが周りの人から「もったいないからお前なんとかしろよ」と言われて、特に思い入れはないけど何千万か借金して継いだらしく、めちゃくちゃ困っているそうです。こういう面白い場所も、表面的なだけではなく話を聞くとさらにすごいドラマがあるなと。珍スポットを継ぐ人が必要というのは新しい視点の発見でした。

3)土地×既知の「あるある」を再定義する

柿次郎:さっき立ち寄ったコワーキングスペースでいただいた「グリーンソフト」が、まさにこの和歌山県の「あるある」ですね。

宮脇:和歌山県外の人に説明すると、和歌山に玉林園というお茶の会社があり、そのお茶屋さんが作っているソフトクリームがこの「グリーンソフト」です。日本で初めてつくった抹茶アイスではないかと言われています。和歌山ではコンビニにも売っていて、県民なら知らない人はいない。むしろ、県外に出てから世の中にグリーンソフトが売られていないことにびっくりしました。

柿次郎:土地に根付いたローカルのものって全国には結構あって。静岡の「さわやか」というハンバーグ店もそうですね。県単位や町単位、村単位で有名なものはいっぱいあるので、ジモコロでピックアップしていけたらいいなと思っています。

4)歴史×文化の「民俗学」的な旅取材記事

柿次郎:ジモコロを運営しているうちに、なんでこの土地はこうなったのかということにはまりました。その土地のルーツをたどる視点はどの土地でも有効です。例えば、熱海の初島には41世帯しか住んでなくてそれ以上増えないとか、苗字が2つしかないみたいな謎があって……。でも、これにもちゃんと理由があるんですよ。その土地がどういう産業をして、どうやって稼いでいるのかというのはその土地ごとに全部理由があり、それを民俗学的に掘るっていうのは、僕が好きなテーマですね。

5)難しいテーマを「漫画」表現で再編集する

柿次郎:これは5月に公開したこちらの記事を見ていただけたら。子どもの貧困問題は、多くの人がそれぞれ違った角度から熱く活動しているので、伝えるのがとても難しいんです。なので、ジモコロでは分かりやすく漫画にして公開しました。さらに、コンテンツをPDFにしてアップロードして紙に印刷できるようにしたので、イベントで配布したり学校に置いたりもできるようにしています。

6)まだ語られていない潜在意識の「仮説」を軸にする

柿次郎:仮説を立てるのって、編集者とかライターには必要なスキルじゃないですか。一年近く前から、「ゲストハウスのオーナー孤独説」という仮説を持っていて。山口県で取材するネタが見つからなかったときに、ゲストハウスのオーナーさんにこの仮説をぶつけて記事をつくるという強引なやり方をしてみました。こういう仮説をたくさん持っておくと、「ネタがなくて取材できない!」ときにも、なんとか記事に紐付けていけるんですよね。

宮脇:自分の中で普段から、「これって不思議だよね」「あれってなんでこうなるんだろう」という素朴な疑問やちょっとした日常の不満をたくさんストックしておくのは重要ですよね。それで、「この人にこれを聞いたら本音で話してくれるだろう」という人が見つかれば、そのストックを混ぜて記事になる。だから、ライターや情報発信する人には引き出しはたくさんあったほうがいいですね。

7)社会課題に紐づいた人物をフラットに切り取る

柿次郎:これは(5)とかぶるところもあるのですが……、一度「ブラインドライター」の女性を取材したことがあるんです。

柿次郎:彼女は視覚障がいがある方なんですが、ものすごく聴力が発達していて、部屋にいるとその部屋がどれくらいのサイズで窓がどこにあるのかが音の反響から分かるそうなんです。すごい能力ですよね。 あくまでフラットにその情報を伝えることで、読者の共感を得たのではないかと思っています。

宮脇:記事を読んで、「私もこの方に文字おこしをお願いしたい」とSNSでコメントしていたライターさんもかなりいました。

柿次郎:そうなんです。そして彼女は、文字おこしのクオリティーも高いんですよね。さらに、記事がきっかっけでテレビに出たりモデルの活動をしたりしています。

●記事は読まれないもの 広く拡散させるためには何が必要?

宮脇:インターネットの登場と普及で、コンテンツを世に送り出すハードルは格段に下がりました。でも、それを広くいろんな人に伝えていくのは簡単ではありません。ジモコロでは記事をたくさん読まれるために、どういうことに気を付けていますか?

柿次郎:特にタイトルは時間をかけて考えます。あとサムネイル画像も大事ですよね。そもそも、とても役立つ情報であっても、記事は「読まれない」ことを前提に考えたほうがいいと思っていて。

宮脇:いま世の中には毎日あふれんばかりのコンテンツが公開されていて、ものすごく話題になったニュースであっても数日後にはもう忘れかねないくらい新しい情報が流通していますからね。内容がマイナーなものであればあるほど広くは伝わらないし、その必要すらないのかもしれません。その中で、タイトルで少しでも多くの人に注目してもらおうというのはネットならではの話で、さっきのタケノコ王の風岡さんは写真勝ち(笑)。あとはクワガタとフェラーリっていう、全く違う単語が並んでいるのもいいですね。

柿次郎:タイトルと内容があっていないと、がっかり感が強くなるので、そこの差をどう埋めるのかという点も注意すべきですよね。

柿次郎:例えばこの記事の場合、「林業とヨガの関係は実は○○だった」みたいなタイトルではなく、あえて「ヨガきこり」という言葉を使いました。文字が大量にあふれているネットの中で、どれくらい違和感を与えられるか。中身に自信があれば、タイトルでボケたり、力強い言い方をしてもアリだなと思います。ローカルネタは「すばらしいから伝えたい」という方法を取る人は多いですよね。もちろんそれも間違ってはいないけど、工夫することも必要だと思います。

宮脇:これに関してはこちらの資料におもしろい言葉があって……これですね。

柿次郎:ローカルを広く届けるにはFF(ファクトとファンタジー)が必要。これに気づいたのは兵庫県の多可町(たかちょう)で取材をしたときなんです。取材した女性が、その恵方巻のアイディアで年商2億の会社をおこしているんですよ。さらに働いている人たちはみんな60歳以上で、しっかりボーナスも出している。仕事とやりがいとお金があって、みんな笑顔なんですよね。それでその社長のおばちゃんは、孫に小遣いを月5万円あげるんですって。

会場:(笑)。

柿次郎:「多くないですか?」って聞いたら「孫がかわいいんだよね~」ってニコニコ笑うんですよ。そこでつけたタイトルがこれです。

そのおばちゃんはひらめきのことを「カンピューター」、味覚がすごいことを「ベロメーター」と自分で言葉を作っていて。それをどう世の中に届ければいいのかを考えました。「年商2億、孫に5万円」というのはファクト(事実)。そこに「カンピューターおばちゃん」という言葉が加わればファンタジーですよね。さらに言えば恵方巻だけで年商2億も稼いでいるのもファンタジーっぽくて夢がありますよね。人はみんなその地域で起きていることを、夢のある形でシェアしたいという気持ちを持っていると思うんですよ。ローカルメディアを運営する上で、この「FF」はとても強く意識しています。

●これからのライターには何が必要? SNSは使うべき?

宮脇:今後、ライターが活躍していくためには、どんなことを大切にするべきだと思いますか?

柿次郎:ライターとして大事なのは、利他的であることかなと最近考えてます。ライターの種類とか記事の書き方にもよりますが、取材は相手に深く入っていくことなので、利他的な愛情がないと相手の懐に入っていけない。取材対象への愛がないと、相手が気持ちよくしゃべってくれないですよね。

宮脇:たしかに。あと、人のために動いている人には情報が集まりやすいってのもあるよね。これは俺だけのネタみたいに囲い込むよりも、いまどんなネタを考えているのか周りに話していると、結果的にそのネタを面白くしてくれる人につながることもある。

柿次郎:それはめちゃくちゃあります。特にローカルネタは、飲み屋でそのとき興味があることについて話していると、教えてくれることが多くて。あと、利他の姿勢があると人やネタや仕事が集まりやすくなるというのは、まあ単純にいい奴には仕事が集まりますもんね。

宮脇:リアルな場だけでなく、SNSでもどんどん情報発信をしたほうがいいと思う?

柿次郎:僕はしたほうがいいと思います。

宮脇:当然人によって顔を出さないという人もいるだろうけど、これだけネットでつながる時代だからね。

柿次郎:顔を出していると、コミュニケーションの総量が増えるので、正直疲れることもあるんですよ。でも、どういう人かわからないより、どういうことが好きなのかとかどんなことに関心があるのかがわかれば、相手も「こういう仕事やってくれそうだな」と感じられる。その空気感を作るのは、これからの時代にプラスに働きますよ。

宮脇:メディアを運営する責任、情報を発信する責任についてちょっと聞いてみたいと思います。ジモコロで守っているルール、あるいは逆にやらないようにしていることって何がありますか?

柿次郎:僕たちが「面白い人」「面白い場所」を発信したいというのは、めちゃくちゃエゴなことだと自覚すること……ですかね。もちろん取材の許可はとるけど、その取材先の人がその情報が広まることを求めていないという可能性があって。

例えば15歳でコーヒーショップを始めた少年の記事は広まりすぎて、1週間で数百人がお店に来店したそうなんですよ。しかも全国、海外からも人が来たらしく。本人がゆっくり成長するべきところを、もしかしたらジモコロの記事が邪魔してしまったんじゃないか…なんて考えが頭をよぎりました。

そもそも、この記事は取材の段階で、記事自体がそんなに拡散はされてなくても、絶対にテレビの取材がくると感じていました。なので、取材時に「もしかしたら今後、メディア側に恣意的に切り取られて情報発信されることがあるかもしれない。そこは気を付けてくださいね」と伝えました。結局、記事公開後は一気に拡散されたので「いま記事がこういう状態になっているけど、こういう風に考えたら大丈夫です。瞬間的なものなので」と電話したり。なので、アフターフォローをしっかりするようにしました。

宮脇:それはいいことだよね。特に彼は若いから。

柿次郎:こちらでわかる感覚値を伝えておくだけでも、少しは安心して備えられるかなと。

宮脇:品川経済新聞でも同じようなことがありました。私自身がよく通っていた「都々井」という立ち食い寿司店が閉店するネタをニュース記事として取り上げたら、最後の2週間くらいは大行列になっちゃって。

▼JR五反田駅ガード下の「立喰ずし 都々井」閉店へ 「一日も早く、また五反田で」
https://shinagawa.keizai.biz/headline/2779/

宮脇:記事公開後は、最後のお別れに来たという方だけではなく、初めて来るという人も多かったみたいなんですよ。この話題はネットメディアがいくつか後追いしたこともあって、常連さんが行列に弾かれて入れなかったのは、もしかしたら僕らメディアのせいもあったかもしれないな、と。大将は「ご無沙汰していた常連さんも顔を出してくれてよかったですよ」と笑ってくれていましたが。そういう経験もあって、我々メディアを運営する側の人間は、どういう情報が誰に届くのかをしっかり意識しながら、その影響力の善し悪しについても意識しておきたいですね。

この後、会場では参加者からの質問に答えるコーナーに。トークセッション後には本屋プラグさんが用意した料理やお酒をいただきながら交流会が行われ、イベントは大盛況に終わりました。
ゲストの柿次郎さん、会場やイベント運営をしていただいた本屋プラグさん、そして集まっていただいた参加者のみなさまありがとうございました。次回の出張#ライター交流会は7月14日(金)、秋田で開催予定です! イベントの詳細はこちらからどうぞ。

<関連リンク>
▼#ライター交流会 @和歌山に参加しました(Crop)
http://crop.wakayama.jp/2017/06/10/writer-event/

▼#ライター交流会@和歌山に参加しました(コワーキングスペース コンセント)
https://concent.loocal.jp/blog/days-in-concent/2453/

▼ライター交流会で地元ネタを発掘する秘訣を聞いてきた!(きゃろたんぬの小窓)
http://www.carrotannu.info/entry/writer-meet01

▼#ライター交流会 hashtag on Twitter
https://twitter.com/hashtag/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%BC%E4%BA%A4%E6%B5%81%E4%BC%9A

▼#ライター交流会 のロゴを一般開放! あなたの地元でも開催してみませんか?(有限会社ノオト)
https://www.note.fm/noteblog/4581/

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