3年ぶりのリアル開催! AI時代の編集者&ライターはどう活躍する? 五反田 #ライター交流会レポート
2023年7月1日、コワーキングスペースContentzで、有限会社ノオト(以下、ノオト)主催の「五反田 #ライター交流会」が行われました。
「AI時代のライター&編集者の役割」をテーマに、前半は編集者の視点からノオト代表・宮脇淳さんとノオトの社員3名がトークセッション。後半は、ライターの視点から、現役のフリーランスライター3名が登壇しました。
約3年ぶりのリアル開催とあって、会場にはライターさんや編集者さん、イラストレーターさんなど、約50人のクリエイターの方に参加いただきました! イベント中にコメントを投稿・閲覧できるプラットフォーム「Slido(スライド)」を使用し、来場者同士が自己紹介などで交流する場面もありました。イベント当日の様子をレポートします。
「AIを活用する人間 対 人間」の未来がやってくる⁉
イベント当日は、ノオトの設立19周年。登壇した宮脇さんは、「コロナ禍の中でできなかった #ライター交流会が、設立記念日に再開できてうれしい」と顔をほころばせます。
ノオトはコロナ禍になってから、社員を3つのチームに分ける編集体制に舵を切りました。チームリーダーを務める杉山大祐さん、関紋加さん、野阪拓海さんの3名が登壇し、この3年間の仕事や職場環境の変化についてシェアしました。
【登壇者】
■宮脇淳
ノオトの代表取締役。「品川経済新聞」編集長をはじめ、広義の「編集」仕事に取り組む
■杉山大祐
2013年入社。主な担当はビジネス系媒体
■関紋加
2015年入社。オウンドメディアを中心に担当
■野阪拓海
2018年入社。担当は働き方や教育媒体など

(写真左より野阪拓海さん、関紋加さん、杉山大祐さん、宮脇淳さん)
宮脇 最近、ChatGPTなどAIが話題に上がるようになりましたが、実際に活用していますか?
関 文字起こしツールのアプリ「notta(ノッタ)」を使っていますね。
野阪 僕の場合は、1時間分の取材の文字起こしに3~4時間かかっていたので、文字起こしツールの誕生は革新的でした。また、ChatGPTも意識的に触っています。企画を立てるように指示すると、今は包括的な企画が出てくるんです。ただし、これから精度が上がってくれば、人間でも考えるのが難しい企画も出てくるはず。それを編集者としてどう扱うかは考えないといけないですね。
杉山 AIの先行事例といえば、やっぱり将棋ですよね。棋士の羽生善治さんがインタビューで、「これまで棋士が直感とか美意識で考えようとしなかったところを、AIは指してくる。それによって、棋士の価値観も変化して考えが深まっている」と語っています。
編集者も、記事にするのが大変な企画って、スルーすることがあるじゃないですか。でも、AIはそういうものも拾い上げてくる。これからはAIが編集長レベルの企画出しまで代替するんじゃないかと思えてきます。これまでの認識ではライティングがAIに置き換わるだけだと考えていたのですが、もしかすると違うのかもしれないですね。
宮脇 なるほどね。AIと言えば「ChatGPT」ですが、これは活用できる人と、使いこなせない人が出てきましたよね。
杉山 ChatGPTで話題になったのは「AI vs 人間」の未来でしたけど、個人的にはそれはもっと先の話のような気がしているんです。例えば、棋士の藤井聡太さんって、AIを活用しているじゃないですか。
そういう「AIを活用する人間 vs 活用していない人間」という場面が、まずあるんじゃないでしょうか。その時に、自分がどちらの立場に立っているかが重要ですよね。AIに仕事を奪われることに不安を感じるより、むしろ活用してその上に行く勝負をしないといけないという。
宮脇 それはあるかもしれないよね。文字起こしツールが発達したおかげで、テープ起こしという作業がなくなることもあるだろうし。これからのライターも、AIの活用にある程度アンテナを張るのは大事なのかも。ただ、AIはいまのところ取材ができないから、そちらに重心をシフトするのもありかなとは思いますけどね。
ChatGPTが登場して「ライターの仕事が代替されるのでは」と不安を感じていた人々にとっては「AIを活用する側の人間になる」という一つの希望が見える話題です。ただ、その道のりは未知。仕事以外にAIについての情報収集や自分で触れる時間を作るなど、かなり意識的に取り組まないと難しいのかもしれません。
トークセッションではそのほか、オンライン取材を円滑に進める工夫やコロナ禍での健康維持、チーム内のコミュニケーションの取り方など盛りだくさんの内容となりました!
現状、AIの活用は「文字起こし」が最適解
トークセッションの後半は、ノオトの社員・鬼頭佳代さんを進行役に、インタビュー上手なフリーランスライター3名が登壇しました。
【登壇者】
■鬼頭佳代
2017年に入社したノオト社員。コワーキングスペースContentzの管理人も担う
■井上マサキ
2015年からフリーランスのライターとして独立。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材などを行う。このほか、「よく使っているのに、あまり知らないもの」に視点を置いた読み物系のインタビューを『デイリーポータルZ』で担当することも。「路線図マニア」で、メディアにも出演経験あり
■つるたちかこ
占いコンテンツの企画制作、ウェブディレクター、出版社を経て、電子書籍事業の立ち上げを経験。現在は病院の広報紙など、フリーランスライターとして幅広く執筆する。趣味は、ボートレースと喫茶店やレストランに出てくる「お冷」について考察すること
■友清哲(ともきよさとし)
ルポやインタビューを中心に執筆する、フリーランス歴24年目のライター・編集者。主な著書に『日本クラフトビール紀行』『物語で知る日本酒と酒蔵』(ともにイースト新書Q)、『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)、『怪しい噂 体験ルポ』『R25 カラダの都市伝説』(ともに宝島SUGOI文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)、『片道で沖縄まで』(インフォバーン)など
(写真左より友清哲さん、つるたちかこさん、井上マサキさん、鬼頭佳代さん)
鬼頭 ChatGPTなどの生成AIで記事を作るのが話題ですが、皆さん活用されていますか?
井上 僕は全然使ってないんです。話題になった時に触ってみて、「質問を作る時に使えるかな」という程度で。
友清 小見出しを付けたり、リードを作ったりするのには便利ですよね。僕は課金せずにLINEのAIチャットとかに原稿をまるっと貼って「要約して」と指示しています。それっぽいリードができあがりますよ。
つるた 私の場合はうまく使えてなくて。前半で杉山さんが話していたような「AIを活用する人間 vs 活用していない人間」の土俵でいえば、後者なのかもしれません。そもそも、すでにAIを使って記事を書いている人は、どのくらいの割合でいるんでしょうか。
ここで来場者に向かって、アプリ「slido」を使って「AIを仕事で使っているか」を質問。回答では、「文字起こしなどでAIツールを使う」人が81%、「使っていない」人が17%、「AIで記事を作っている」人が10%という結果となりました。会場からは実際に使っている例として、「企業の紹介文の要約を作成し、出力された文章をもとに編集する」という意見が上がりました。

井上 つまり、たたき台として活用している感じなんですね。1を100にする効率化という点では向いているけど、0から1を任せるのは大変かな。
鬼頭 そもそもChatGPTはネットに情報がないと要約してくれないから、ローカルからネットに情報を持ってこなくちゃいけないんですよね。あとは、AIと言えば文字起こしツールも話題ですけど、皆さんどんな感じで取材を進めているんですか?
友清 僕は文字起こしをそもそもしないですね。その時間がもったいないから、取材中はレコーダーの時間を見ながら索引づくりをしています。「何分に何の話」とか「セリフ」って書いておいて、後から必要なところだけをかいつまんで聞いて構成するやり方です。
つるた 対話形式の記事もそうやってるんですか?
井上 もしも取材相手がめちゃくちゃ話し込んだら?
友清 対談だったら、索引づくりの時に「〇〇さん」とメモを追加で書くだけです。相手が話し込んでも、「何分以降は×」とか「オフレコ」とか、どこで飛んだか見ればわかるようにしています。
井上 そうなんですね。僕は割ときっちりと文字起こしをするタイプで、聴覚障がいの方も使うアプリ「UDトーク」を使ってます。原稿を書くのと並行しながらアプリで文字起こしをして、文字起こしができたら原稿に反映して、という作業。だから、最近は現地でメモしなくなりましたね。書くとしても数字ぐらい。
つるた 私は文字起こしツールを使っていなくて、現場でタイピングしながらメモを取るんです。そのメモを元に構成を作って、音声を聞きながら修正を加えていきます。取材が重なると、文字起こししないと、内容が思い出せなくなるんですよね。
鬼頭 AIが良いアシスタントとして機能してくれたらいいんですけどね。
井上 そういう意味では、自分にない視点をAIが持ってくれたらうれしいですよね。たたき台の相談相手になるかもしれないし。
つるた いいですね。それに育てがいのあるAIなら、もっといいですよね。同じパターンばかりじゃなくて、「この動き覚えたんだ」「その視点得たんだ」とか新たな発見があると面白そう。ペットロボットの「aibo」みたいな感じで。
友清 今のAIって、イメージしていたよりも学習してくれないですよね。だから僕はAIには期待していないんですよ。現状のAIには文字起こしをしてもらうのが最適解かな。皆さん、仕事をAIに取られるっていう心配あります? 僕はなくて。
井上 あまりしてないですね。ただ、足元をすくわれるかもしれないから、自信を持って「大丈夫!」とは言えないですけど。
つるた そうですね。読者が人間だから、AIより私たちのほうがより読者のことを理解できるんじゃないかと、個人的には希望的観測を持っています。
トークセッションではこのほかに、取材の失敗談や「いいインタビュー」の定義など、話題が多岐に及びました。
個人的に面白かったのは、ライターならではの「もしも」に対する備え話。「レコーダー用に乾電池を常備する」「取材先でレコーダーを置くスペースがないかもしれないから、ネックストラップを付ける」といった意見は、ぜひ取り入れようとメモしました!
この後は、会場内で来場者同士の交流会を約2時間たっぷりと実施! 編集者やイラストレーターなど、ライター以外の「伝える」ことに携わるさまざまな職種の方も参加していました。
約3年ぶりのリアル開催のライター交流会は盛りだくさんの内容で幕を閉じました。ライター同士で話す機会は、なかなか少ないもの。ぜひ次回も皆さんとお会いできるとうれしいです。

(執筆=ゆきどっぐ 編集=杉山大祐/ノオト)
