投稿日:2025年12月24日

「地元で活躍しているライターは、地域と一緒に楽しんでいる」浜松 #ライター交流会レポート

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2025年9月19日、「浜松 #ライター交流会」を開催しました。静岡県西部に位置する浜松市で #ライター交流会 が開かれるのは今回がはじめて。会場は、JR浜松駅から徒歩6分の好立地にある、イベントスペース「SOU(ソウ)」です。

からりとした夜風が肌に心地よく、秋の訪れを知らせてくれたこの日。ライターさんを中心に、編集者さんやフォトグラファーさんなど、浜松地域で活動するクリエイターの方々が集いました。

今回は、ゲストスピーカーとして登壇したBtoB特化型ライターの菅原岬が、自らイベントをレポートします!

浜松に魅入られたふたりが登壇

今回のテーマは、「地元で活躍するライターになるためには?」。クリエイティブの現場でも生成AIが使われるようになり、書くことの意義が問われるようになった今。地域のライター・クリエイターに求められる役割について考えます。

ゲストスピーカーは、地域情報メディアを運営するむすびめコミュニケーションクリエイツ株式会社(以下、むすびめ)取締役社長・編集長の中尾文宏さんと、私、BtoB特化型フリーライターとして活動する菅原岬です。

中尾さんは、出版社のKADOKAWAグループでWebメディアや電子書籍といったデジタルコンテンツ制作やマーケティング業務に長く携わったのち、省庁や地方自治体等の広報戦略のプロジェクトに多数従事しました。2024年、むすびめに参画し法人化したのは、取材や撮影で地方を訪れるなかで、地域のクリエイターと共に地元メディアを作り、エンタメで地域を盛り上げたい!との想いがだんだんと大きくなっていったからだそう。現在は東京と浜松の2拠点で、ご活躍です。

私は、タイでの仕事から帰国後に新天地を求め、千葉県出身ながら浜松へ移住。地元企業の技術や魅力を多くの人に届けたい、とライター活動を始めました。前職でのBtoB営業の経験を生かしたインタビュー記事やSEO記事の制作が強み。製造業や物流業など市内の企業と直接契約を結び、コンテンツ制作を支援しています。

地域を取材しよう!地元を知りたい気持ちが仕事につながる第一歩

トークセッションでは、主に9つのキーワードをもとに話題を展開しました。

浜松と聞くと、みなさんはどんなイメージを持ちますか? うなぎや餃子がおいしい街、徳川家康とゆかりがある街……などでしょうか。実は、スズキやホンダ、ヤマハなどが創業しており、「モノづくりの街」や「ベンチャー起業の街」といった側面もあります。

そこで、最初のトピックは「浜松の地域性」について。

中尾さんは、浜松に来てみて、魅力的な企業がたくさんあることに驚いたといいます。「製造業に限らず、そのほかの業種でもきらりと光る企業が多い印象です。経営者さんとの距離も近いので、企業への取材も受け入れられやすい。『取材が楽しい街』だと思うようになりました」

一方で菅原は、「浜松は応援を得やすい街」と言及。たとえば、浜松には「やらまいか精神」といって「やってみようよ!」と志ある人を応援してくれる風土があります。「もともとは浜松に知り合いがいなかった私ですが、『あの人の話を聞きにいってみては?』と人が人を紹介してくれ、地域における自分の役割を見つけていきました」

中尾さんと私の共通点は、いまでは浜松の土地にすっかり溶け込んでいるけれど、もともと浜松と縁もゆかりもなかったこと。そこで、それぞれの活動の広げ方に話題が移ります。

中尾さんの場合、仕事のきっかけは“人との交流”から生まれました。「私も最初は浜松に知り合いがいなかったので、まずは純粋に『友達を作りたい』という思いで行動を始めたんです。コミュニティやイベントに積極的に参加し、主催者や参加者と仲良くなる。すると、みなさんが私たちの活動を口コミで広げてくださり、雪だるま式に人のつながりが増えていきました」

菅原は、2017年春に浜松へ移住。地域の皆さんとの交流を楽しむうちに、「国内でこの会社にしかできない加工」や「シェア率No.1の知られざる製品」など、浜松の企業が高い技術力を持っていることに気づきました。地元企業の魅力を多くの人に知ってほしいという気持ちが高じ、記事を自主制作していたところ、とあるメディアの目に留まりライターへ。その後は、メディアを通じて取材を申し込み、インタビューに行くことが営業活動そのものになりました。書いた記事が実績となり、次の仕事につながっています。

浜松では、企業のゼロイチを伴走することが付加価値

むすびめは、地元で活躍する女性クリエイターたちのユニットがはじまり。ライターやデザイナー、フォトグラファーなど多彩なメンバーが所属し、お互いの得意分野を生かしあいながらクリエイティブ制作を手がけています。

そうしたスタイルが好評を呼び、とくにチームで仕事をしたいという地元クリエイターたちがどんどん仲間に加わっていきました。そんなむすびめには、地元企業からの相談もよく寄せられています。

『情報発信をしていきたいけれど、具体的に何を、どんな切り口で発信すればいいのか?』と、聞かれることが多いですね。そのため私たちは、ただコンテンツを作るだけでなく、その手前にある『何を伝えるか』という企画を考えるところから支援させてもらうケースがよくあります」(中尾さん)

企業の皆さんが情報発信をしたい理由は、近年は圧倒的に「採用強化」だといいます。従来のやり方では優秀な人材の応募を集めることは困難になってしまった。採用ページだけでなく、SNSからも「働く社員のインタビュー職場の雰囲気」というリアルな企業カルチャーの情報を発信しなければ見てもらえない……。

「企業側のニーズを細かくかみ砕いてから、企画を考え、SNSの技術的な知見を持つクリエイターさんや採用の専門知識を持つライターさんを集めてワンチームで制作・支援にあたっています。このように企業のSNSやオウンドメディアの立ち上げから運用まで“ゼロイチ”の支援を求められるのは、時代性でもあり、土地柄なのかもしれません」(中尾さん)

私の働き方も、ライティングや取材の案件をただ請け負うだけではありません。取材を通じてお客さま先について理解を深めながら、徐々にパートナーとなっていくスタイルです。

「取材を通じてお客さまの現場を知ることで、事業に対する解像度が高まっていきます。それが『このライターさんは、自社の事業について分かってくれている』という安心感を生み、継続的なお仕事につながっているように思います」(菅原)

こうした「事業理解」は、BtoBならではのスキルであり、ライターとしての付加価値の1つでもあります。「お客さまの事業を理解するからこそ、取材では技術や製品の魅力を発見しやすくなる」とお話しました。

地元に根差したライターがチームを組むと強い

地元で活躍するライターには、今後どのようなスキルや役割が求められていくでしょうか。

中尾さんは「お客さまと一緒に楽しむことが付加価値になる」と表現します。

「いつも驚くのが、地元のライターさんの提案力です。コンテンツを企画するとき、『こういう切り口で、この人を取材してみませんか?』と、提案がスラスラと出てきます。地元に根ざした企画というのは、地元でのお付き合いを大切にしている人だから出せるもの。私自身、地域のみなさんの仲間に混ぜてもらいながら、お客さまと一緒に企画や制作を楽しんでいますし、そのように動けるライターさんは心強い存在です」(中尾さん)

それに加えて、得意なジャンルを持っておくことも大事です。「たとえば、採用コンテンツを書くときには、人事系の資格を持っているライターさんが重宝されるはず。製造業が好きとか、物流の記事も書けるとか、そうした得意ジャンルが専門性という付加価値を高めてくれ、選ばれるライターになっていくと思います」(菅原)。

また、さらに付加価値を高める方法には、チームをつくるという手も。いろんな得意分野をもったライターさんやクリエイターさんがチームを組むことで、仕事の可能性が広がります。具体的なメリットとして、下記のポイントが挙げられます。

  • 複数の視点を混ぜることで、思ってもみなかったおもしろい企画が出てくる
  • ライティング、撮影、編集など作業を分担することで、1人ひとりが各自の“得意”や“好き”に注力できる
  • 個人では受けきれない仕事も、チームなら受注できる可能性が増す

チームを組むメリットについては、進行を務めたノオトの宮脇さんからも投げ込みが。

ふとした疑問を相談できたり、興味のある分野について一緒に勉強しあえたり、励ましあったりできる関係性がチームの良さです。これは、仕事を依頼しあう発注関係とは異なるものだと思います。いろんな得意分野を持ったクリエイターさんが集う浜松だからこそ、お互いに協力しあうことで、やりがいがますます増えていきそうですね」(宮脇さん)

地元でチームをつくる大切さについて、中尾さんからもコメントがありました。

「浜松に限らず、地方のライターさんはマルチタスク型が多いように思います。書くだけではなくカメラでの撮影も頼まれたり、ちょっとしたデザインをお願いされたり。

そんなときチームで助けあえれば、一人ひとりが自分の得意なことに集中できるようになります。結果的に生産性を高め、実績を積み重ねることが可能になります。仕事の融通が利きやすくなり、余裕をもった働き方も実現しやすくなりますね。

それこそ、むすびめが会社というチームの形になっている利点だと思うので、うまく活用してもらえたらうれしいです」(中尾さん)

トークセッションの後は、ドリンクと軽食をおともに約1時間の交流タイム。「地元のクリエイター同士で交流する機会がほしかった」「浜松のライターさんがどんな仕事をしているか知りたかった」、と、積極的に交流し、会話に花を咲かせていました。

有意義な情報交換の機会となったようで、私もたくさんの刺激をいただきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!

(執筆:菅原岬 撮影:桒田萌 編集:ノオト)

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