個性も得意も異なる仲間とともに、チームで働く魅力とは? 名古屋 #ライター交流会 vol.3
2025年6月28日(土)、ウェブ業界向けイベント「contents.nagoya 2025」内で「名古屋 #ライター交流会」が開催されました。会場は名古屋国際センター(名古屋市中村区那古野)。
名古屋での開催は3回目! 今回は東海地方で活動するライターチーム「Writing Ship」のメンバーをゲストに迎え、トークセッションを実施しました。
この日の名古屋は、夏めいた日差しが照りつける暑い1日となりました。そんななか、ライターをはじめ、Webディレクター、フォトグラファー、編集者などさまざまな業種が来場し、今回のライター交流会も熱いムードに。当日の様子をレポートします。
4人組ライターチーム・Writing Shipのメンバーが登壇
今回のテーマは、「ライターと“チームで”いいコンテンツをつくるには?」。
Writing Shipは、2023年に東海地方在住の女性4名で発足したライターチームです。異なる強みを持つメンバーが、幅広い依頼に対応しています。また、執筆だけでなく、女性向けのキャリアセミナーや、ライター育成講座「取材道場」といったキャリア支援など、多岐にわたる活動を展開しているのも特徴です。
チームの名前は「それぞれの得意を持ち寄り、チームになることで新しい道を切り拓いていきたい」という思いから、チームを船(Ship)になぞらえて命名したそう。そんなWriting Shipからは、勝目麻希さんと光田さやかさんが登壇しました。
Writing Shipのリーダーである名古屋市在住の勝目麻希さんは、新卒で三菱UFJ銀行に入社。結婚のタイミングで名古屋本社の商社へ転職し、出産を機に離職。2018年からフリーランスライターとして活動を開始しました。銀行に勤めていた頃の経験を活かし、金融関連の執筆活動を中心に行っています。
「ライターデビューしたあとに息子の自閉症が発覚したのですが、働き方を自由に選べるフリーランスだったからこそ、息子に寄り添うことができました。自分の経験を発信することで、誰かの希望になればうれしいです」(勝目さん)
もう一人の登壇者、光田さやかさんは愛知県大府市在住。学生時代から言語学研究に打ち込み、雑誌編集者としてキャリアをスタートします。その後、結婚と子育てのためにキャリアを中断。その後の離婚を機に、「自分の本当にやりたいこと」を見つめ直した結果、「書く仕事」に回帰したそうです。
「いまは、地域情報誌などの雑誌制作を中心に、ウェブコンテンツや企業広報活動、事業開発の伴走にも注力しています。日本語が大好きなので、交流会でもみなさんが興味関心のある言葉についてお話できたらうれしいです!」(光田さん)

ノオトからは、宮脇淳と鬼頭佳代が登壇しました
SNSから、人となりも見えてくる
得意分野も経歴もまったく異なるお二人。個性豊かなWriting Shipのメンバー。チーム結成のきっかけについて、光田さんが教えてくれました。
「Writing Shipメンバーの神谷加奈子から、私のInstagramにDMが届いたのがはじまりです。でも私、ライターであることは明記していたものの、インスタは趣味である着物の写真ばかりあげていて。『なんで連絡くれたんだろう?』と不思議に思ったのですが、面白そうだから一緒にランチに行くことにしたんです。そこには、勝目と西田もいたのですが、一気に意気投合して。いまの4人での活動がはじまりました」(光田さん)
Writing Shipがそうだったように、「SNSでの発信が自分の存在を知ってもらうチャンスにつながるのでは」と、2人の意見が一致。
「ライターさんの投稿をながめていると、制作実績はもちろん、どんな人なのか、どんな考えを持って仕事に臨んでいるのかが見えてきます。自分と同じ志を持っている人が見つかれば、声をかけやすいのではないでしょうか」(勝目さん)
「そういえば、神谷に『なんで趣味の着物の画像しか上げていないのに、私に声をかけてくれたの?』と聞いたら、投稿の文章を読んでいたと言ってくれたんです。ちゃんと見てくれている人がいるのを知って、うれしかったですね」(光田さん)
いまや名刺代わりにもなるSNSの投稿。自分の価値観や仕事に対する思いも伝わる心強い存在です。
フリーランスだからこそ、支え合えるチームが力になる
個々がフリーランスとして実績を持つWriting Shipのメンバー。一人でも仕事ができるのに、あえてチームを組んだのはなぜだったのでしょうか?
「確かに私たちは、それぞれ個人事業主としてそれなりに仕事を回せます。だからこそ、互いに頼ることができるんです。自分ができないときは他の人に任せたり、逆に誰かができないときに私がフォローしたりと支え合っています」(勝目さん)
ライターは独自性の高い職業でもあり、専門性が求められるシーンもあります。そのため、そういった案件があった場合は、「このジャンルならこの人と、チーム内で仕事を割り振っているんです」と勝目さん。
「私たちは得意分野も性格もバラバラ。だから、一人でも欠けていたらバランスが取りづらかったんではないかなと思います。一方で、ライティングや仕事に対する価値観はとても似ている。そして、4人という少人数チームだからこそ、方針の乖離も生まれづらく、うまくいってるんじゃないかな」(光田さん)
Writing Shipのキャッチコピーは「書く力で制限のない私へ」。それぞれが歩んできた人生や仕事の悩みから、「書く力で女性を元気づけたい」「自信を持たせてあげたい」という思いが込められています。SNS上で偶然出会った4人ですが、初めて言葉を交わしたときから、根底にある思いが一緒だと感じていたそう。
ときには、1つの案件を4人で取り組むこともあるといいます。たとえば、企画出しの際には、メイン担当のメンバーがグループLINEで「こんな企画を考えてるんだけど、どうかな?」と持ちかけ、全員でブラッシュアップしていくことも。
得意分野であれば一人で完結させることもありつつ、マンパワーが必要なときには力を合わせられるのも、チームプレーの強みです。
気になるのはギャランティの配分ですが、事前にルールを決めており、トラブルが起こったことはないといいます。さらに、勝目さんの「Writing Shipでは、ギャランティの一部を運営費として残しているんです」という発言には、会場からも驚きの声が上がりました。
まるで会社のような運用ですが、「互いにフレキシブルに動ける関係性でありたい」と、あえて法人化していないそう。
「会社にしようかという話が出たこともあったんです。でも、会社にすると、誰が上長で、どういう仕事をとってこなきゃいけなくて、お金も回さなきゃいけない……とならざるを得ない。ひとりひとり事業家としての力があるのに、そこを潰してまでやる必要があるのか?という話になり、この話はふんわり自然消滅しましたね」(勝目さん)
さらに大型案件の場合は、外部の協力ライターやフォトグラファーと一緒に制作に当たることもあるそう。「外部のメンバーも一緒に仕事をしていくWriting Shipの仲間です。だから、同じ船の乗務員として、『クルー』と呼んでいます」と勝目さんは笑顔を見せてくれました。
その際、Writing Shipのメンバーはクライアントと外部協力者の間に立ち、進行管理をする編集の立場になります。フィードバックの仕方で、気をつけていることを伺いました。
「メールのCCにクライアントが入っていたりすると、どうしても強めの表現でフィードバックをしなくてはいけないシーンもあります。その時は、文面だけで伝えきれないニュアンスは、電話で補足しますね。『こういう伝え方になってしまって、本当にごめんね』という思いを丁寧に伝えています」(光田さん)
人間だからこそできる深掘りで、読者に届くコンテンツを
愛知県でのライター仕事の特徴について、2人は、自動車関連企業などの製造業が多いことが挙げてくれました。特に採用コンテンツの需要が高いと語ります。
若手社員の確保に苦戦する企業が多い中で、企業の強みを求職者の視点に合わせて「翻訳」し伝える能力にニーズがあると、2人は声を揃えました。
「メーカー側は、どうしても『自分たちの技術を伝えたい!』という気持ちが前に出てきます。でも、ただその技術を解説されたところで、知識ゼロの求職者には、その魅力が伝わりにくい。だから、この技術が自分の生活のどんなところに役立っているのか、この技術に誇りを持っている会社にはどんな人がいるのか……など、求職者側の視点に立って、掘り下げていく必要があると思うんです。また、社員がSNSの運営をしている企業もありますが、どの情報を発信したら注目してもらえるのかを分析するのはなかなか難しいものです。そういったところにライターが入り込んで、フォローしていく関係性が構築できるといいですよね」(光田さん)
最後に、「今考える良いコンテンツ」について、お二人にうかがいました。
「今、長い文章や難しい文章に抵抗を感じる人が増えていると感じます。だからこそ、読者の目線に立ったわかりやすい記事をつくることが大切だと思うんです。特に、私は金融機関のクライアントが多いので、なおさら専門知識を噛み砕いて伝える力の必要性を感じるのかもしれません。こう伝えたほうがわかりやすい、こういう書き方はどうか?など、クライアントにきちんと意見できるライターになって、読んで良かったと思ってもらえるコンテンツを作っていきたいですね」(勝目さん)
「ただ記事を書いて伝えるだけではなくて、読者を行動させるところまでが、私たちの仕事だと思っていて。そのためにも、必要なのは問いを立てる力だと思います。クライアントや取材先が、どうしてそれを行っているのか、その背景には何があるのか、なぜそれが重要なのか……。きちんと聞き返せる力が、読者に伝わるいいコンテンツにもつながっていくはず。こういった視点が、まだAIに対抗できる部分なんじゃないかなとも思いますね」(光田さん)
参加者からも質問が寄せられ、とても盛り上がったトークセッション。その熱が冷めやらぬまま、交流会タイムに突入しました。Web業界向けのイベント内での開催だったこともあり、ライターや編集者だけでなく、Webディレクター、デザイナーなど、さまざまな業界の人が集い、大いに賑わいました。
今回のライター交流会をきっかけに、新しい仲間づくり、チーム作りに関心を向けてもらえれば嬉しいです。参加いただいた皆さま、ありがとうございました!
(執筆=モリヤワオン/ノオト 編集=鬼頭佳代/ノオト)