投稿日:2023年12月14日

ローカルライターよ、「街」を愛せ! 名古屋 #ライター交流会レポート

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2023年11月9日、名古屋駅近くの「なごのキャンパス」にて、有限会社ノオト主催の「名古屋 #ライター交流会」が開催されました。名古屋での #ライター交流会は、じつに5年ぶり! さらに、また #ライター交流会 は通算50回目という節目の回です。

愛知はもちろん、岐阜や三重など東海地方在住のライターさんを中心に、たくさんの方が来場。冬めいてきた天候とはうらはらに、イベントは温かい雰囲気に包まれていました。

#ライター交流会は、トークセッションと交流タイムの二部構成。今回のトークセッションには、“名古屋ネタ”ライター・大竹敏之さんと、愛知県出身で現在は岐阜県多治見市を拠点に活動する編集者・ライターの笹田理恵さんの2名が登壇しました。

トークテーマは「東海地方の仕事、東京の仕事」。拠点である東海地方と東京、どちらの仕事もこなすお二人に、地方ライターだからこそできるお仕事のコツを伺いました。司会進行は、ノオトを代表して愛知県出身の編集者・鬼頭佳代が担当しました。

ローカルネタの解像度を上げるには?

鬼頭:地方に住んでいると、「その地域ならでは面白い企画」を求められるシーンも多いと思います。まだ誰にも知られていない情報を見つけたいところですが、ローカルネタの解像度を上げるにはどうしたらいいのでしょうか?

大竹:人とのつながりが大切だと思います。そして、街の中で生きていることがそのまま取材に繋がるのが理想です。例えば、たまたま地下鉄で会った知り合いから「あそこで面白いイベントをやってるよ」と教えてもらったり、プライベートの買い物中に店長につかまって「大竹さん、今度面白いことをやるから取材してよ」と言われたり。僕はこんな感じで、ネタを見つけることもしばしばあります。

鬼頭:私は以前に大竹さんと一緒に名古屋の喫茶店へ取材に伺ったことがあるのですが、店員さんとのやり取りが、良い意味で取材らしくなくて。まさに、人対人のコミュニケーションで驚いた記憶があります。

大竹:普段からお店に客として行っていますね。僕は長く名古屋めしの取材をしていますけど、最近はお店に取材依頼をしても、掲載媒体を聞かれないことも多いんですよ。「大竹さんまた来たんだね、今日はなんだっけ、取材?」といった具合に。

そういう関係性を築けると、情報が入ってきやすくなる。そして、リアルなコミュニケーションから入ってくるローカルでニッチな情報は、まだ誰も書いていないことが多いものです。

鬼頭:足で稼ぐ……といったところですかね。

大竹:もはや「稼ぐ」って意識もないくらいがベストかな。

笹田:人のつながりってたしかに大事です。私が拠点にしている岐阜県多治見市は、日本有数の焼き物の名産地なんですね。だから多治見に住み始めたばかりのころ、「ここで焼き物について書いていけたらいいな」と思っていました。

でも、やっぱり専門性が高くて、敷居の高さを感じて……。どこから入っていこうかと探りながら過ごす中で、多治見は歩いているだけでたくさんの陶芸作家さんとすれ違う街だということに気がついたんです。

鬼頭:つまり、交流を増やせば、焼き物文化に触れる機会も多くなる……と。

笹田:その通りです。人と人との付き合いの中で、自然と陶芸家の友達が増えていく。それがひとつ、焼き物にまつわるお仕事を任せてもらう機会になりました。

鬼頭:街での出会いが、仕事に結びついたんですね。

笹田:そんななかで、焼き物専門の産地商社さんからオウンドメディアの記事制作をご依頼いただいて。その商社さんが扱っている器の作家さんやメーカーさんへの取材を何十件と続けていくうちに、どんどん知識が増えていきました。独学で勉強するよりも、現場で教えてもらうほうがはるかにリアリティがあって、学べる部分が多いな、と。

大竹:わかります。僕も取材の中で知識を高めていくことは、よくありますね。

鬼頭:お二人の話を伺っていると、ある意味で「いい生活者」というか、自分自身が解像度高く暮らすことがネタに繋がっていくという印象があります。自分の暮らす地域に対して今以上にアンテナを立てることが大切なんですね。

積極的に「会いにいく」ことが大切

鬼頭:地方在住のライターさんにとって、東京の編集者とつながることも、仕事を広げる上で大きなチャンスになると思います。お二人は東京の編集者とつながるためにやっていることはありますか?

大竹:今はリモートでも会話できる時代ですけど、オンラインと直接会うのとでは印象がぜんぜん違うと思います。実際に会ったほうが、やっぱりリアリティがある。駆け出しのころは毎年、東京へ営業に行っていましたね。しばらく行けていなかったんですけど、最近、お付き合いのある会社さん数社にご挨拶に行きました。

鬼頭:ノオトにも来てくれましたよね。「鯱もなか」を持って。

大竹:そうそう。以前、名古屋にある老舗和菓子屋「元祖鯱もなか本店」が、「廃業寸前だけど、がんばっているよ」という記事を書いたら、ものすごくバズって商品が飛ぶように売れたんです。

大竹:営業のとき、あの記事のもなかです〜という感じであちこちに持って行って。そうしたら、たまたますべて仕事に繋がって驚きました。

鬼頭:廃業の危機を救って、自分の仕事にも結びつけるとは……!

大竹:逆に僕自身も、もなかに救われましたね。

笹田:私は大竹さんと真逆なのですが、営業は一度もしたことがなくて。その代わりに、イベントに参加したり、講座や展示へ通ったり……。興味のある場所へ積極的に足を運ぶようにしています。実際、東京で受けた講座がきっかけで、お仕事をもらったこともあります。

大竹:フットワークの軽さは必須ですよね。多分、ライターになる方は「人と会うのが得意じゃない」という人も多いと思うんです。1人黙々と本を読むのが好きとか。僕が今まで会ったライターの中で「人に会うのが大好き」っていう方、1人しか知らないですもん。

一同:(笑)。

大竹:でも、会わないと面白い記事って書けないわけですから。僕も20年前にはこんなにたくさんの人と話すなんて考えられませんでしたが、やっていくうちに慣れてきて。場数を踏めばいつかは慣れるものです。

鬼頭:今日も緊張しながら来場した方がいたかもしれませんが、この名古屋 #ライター交流会 も次につながるきっかけになればいいなと思います。

地方でもチームを組める心強さ

鬼頭:笹田さんは、多治見在住のクリエイターさんたちとチームを作って活動されているんですよね。

笹田:はい、多治見で活動しているフリーランスのデザイナーやイラストレーター、フォトグラファーと、「dig」というチームを組んでいます。「インタビュー」「おみやげ」「デザイン」の三本柱で、多治見や岐阜を掘り下げる活動をしています。

鬼頭:なぜ、チームで活動しようと思ったのでしょうか?

笹田:独立した当初、フリーランスの編集・ライター1本で活動していくことに不安があって。デザインや撮影、ディレクションも包括的にできるチームがつくれれば、できることの幅が広がるんじゃないかと思ったんです。実際、これまでデザイナーさん1人でやっていた作業をチームメンバーで分担できるようになりましたし、体調を崩したり子育てが忙しかったりする時は他のメンバーがフォローしたり。支え合えるのが強みだなと感じています。

鬼頭:仲間がいるのは心強いですね。大竹さんはどうでしょう?

大竹:僕は所属しているチームはないんですけれど、ライターとして活動を続けていくうちにフォトグラファーさんやデザイナーさんとのつながりができていきました。案件ごとに最適なチームが組めるくらいの人脈があるとベストですよね。

名古屋での取材なのに、東京の編集者から「フォトグラファーは東京から連れていきます」なんて言われることもあるんです。そういう時は、「いやいや、名古屋にだってたくさんいるんですよ!」とこちらから提案したり。

鬼頭:東京の編集者としては、知り合いが全くいないエリアもあるので、ご提案をもらえるのはありがたいです。

大竹:それに、東京からの新幹線代も浮くでしょう?

一同:(笑)。

ローカルライターの生存戦略

鬼頭:地方ライターとして長く活動していくために、やっておくべきことはありますか?

大竹:「この企画を頼むなら◯◯さんだ」といってもらえるような、専門分野がいくつかあるといいですよね。僕は活動を始めた当初、名古屋にいることだけが武器で。でも、長くやっているうちに、その中から専門分野が増えていきました。名古屋めし、名古屋の喫茶店、最近は金シャチも柱になってきているかな? ニッチな柱だと、書き手が少ないのでアドバンテージになると思います。

笹田:私は「dig」での活動が生存戦略なのですが、もう一つ、ライターだけではなく編集者としても活動できているのも強みかなと思います。ディレクションの視点があるライターというところを買ってもらって、仕事を受けることもありますね。ただ単発でライティングを行うだけでなく、編集者として媒体の方針や根幹のところから関わっていけるのはやりがいがあります。

大竹:笹田さんの「ライターと編集者」もそうですが、同じ題材でもアウトプットの仕方が複数あるのはいいですよね。僕も、ライターだけでなく、こういう講演やテレビ出演、イベントの開催など、さまざまなアウトプットに携わらせてもらっています。

大竹:ライティングだけでなく様々なアウトプットにチャレンジするのは、自分が動くことで街を楽しくできればという想いがあるからなんです。ローカルのクリエイターがいちばん大事にすべきなのは、住んでいる街を愛することだと思います。自分が楽しむことでみんなも楽しんでくれて、ちょっとずつ街が楽しくなる。街が盛り上がることで、巡り巡って自分の仕事も増えるのかなとも感じますね。

笹田:すごく共感します。私が独立して食べられているのは、やっぱり多治見だったからだと思うんです。私は多治見出身ではないですが、外の人間だからこそ、多治見愛が強いというか。そして、それを街の人達がすごく喜んでくれるんですよね。街のみなさんが私の仕事を求めてくれるのは、私が多治見を大好きな気持ちが伝わっているからかなと思います。

鬼頭:ローカルライターのお二人らしい、素敵なまとめをありがとうございます!

交流会はたまごサンドを片手に

質疑応答を経てトークセッションは終了。その後は、参加者同士での交流タイムです。

円頓寺商店街にある「なごのや」さんの「たまごサンド」に舌鼓を打ちながら、会話に花を咲かせました。

レポートを書いてくださった参加者の方も。

【長年の夢叶う】念願の「名古屋ライター交流会」に参加しました!

会が終わってしまうのが名残惜しいほどの盛り上がりでした。参加していただいたみなさま、本当にありがとうございました!

(執筆:モリヤワオン 撮影:杉山大祐、小林景太)

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